はじまり


震災

1995年1月17日 AM5:46
前夜、友達と夜中まで話しをして、連休明けの仕事の事を考えながら、
いつものように家内の隣に寝た。
2歳と3ヶ月の子供は、爆睡状態、程なく私も眠りの世界に入りました。
 「お父さん!!」と家内の声と同時に今まで感じた事の無い大きな揺れ、
まだ夢を見ているのだろうか?しゃれにならない位の現実、
まるでゴジラが我が家を掴んで揺さぶっているような感じの中、
家内は「勇」と名前を呼びながら、子供の寝ている方へ身重の体で
今まさに動こうとした時、なぜか私は、家内を引きとめ、「動くな!」と
家内の体を覆うように上になる、真っ暗なはずの家の中にも関わらず
家内が上を見ながら「天井が崩れてくる」と言い、次の瞬間、
大きな音と共に砂煙が舞い、私は、背中に天井が乗ってくるのを感じました。
息をする事も出来ないくらい埃が舞いあがり、
その後なんとか息が出来るようになったとき、
自分の体が挟まれて動けない事に気が付きました。
 足の上にタンスが倒れて背中には、天井、下には、家内が、
そして子供は、大きな声で泣いていましたが、
怪我や何かで痛がっている様子では無かったので「助かった」と、
心の中でつぶやきました。
この時もまだ、何が起こったのか理解が出来ず、
只、降りかかった現実を身にしみて「大変だ」と理解しただけでした。
 子供の無事を確認すると、出来る限りの周りの状況を知ろうと、
片手づつ手探りで触っていきました。自分の左側に空間が少しあったので、
家内に体を少しそちらへ動いてもらい少しは、お互い楽になったのです。
次に家の中の状況を思い浮かべるのですが、
想像を絶しているため思いもできませんでした。
安全に付いて考えた時、
「この家から火の出る原因となる事は,無いだろうか?」
ストーブは、タイマーがセットしてあるが、この状況だと、
電気は、遮断されているので大丈夫、
ガスもマイコンタイプのメーターなので大きな振動があればバルブが閉じるはず、
それら以外に、火の出る原因は無いので、ここからは、火災は起こらない。
しかし、延焼となるとこのままでは、逃げる事も出来ない。
まるで落語の「不精の代参」の枕話やんか と、その場に及んでいらぬ事を考えてました。
 家内には、「火事になったら・・・」何てこと言えるわけも無く、
只、祈るばかりでした。
そうこうしていると、母の声が聞こえてきたりして、母の無事もわかり、
どれくらいの時間がたったのか、気が付くと子供の声が無く心配になって、
名前を呼び「大丈夫か?」と言うと、
「とーしゃん、かーしゃん、じょうぶ、じょうぶ」と
一生懸命、自分が大丈夫だと答えるのです。
またその内、疲れて真っ暗な中、彼は眠りにつくのです。続く


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